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【25-26 NBA】イースタンカンファレンスファイナル 感想

 今年のイースト決勝はニックスとキャブスという顔ぶれ。直近4年間で2回の2ndラウンド進出、そして遂に去年カンファレンスファイナルに出場した強豪ニックスと、去年シーズン1位でプレーオフに臨み、2ndラウンドでペイサーズに敗れたキャブス。

 トム・シボドー体制でランドル、バレット、ローズらと共に低迷期脱却の狼煙を上げ、ブランソンを迎えてからは本格的に強豪と呼べる地位を築いたニックス。そのシボドーを解任してマイク・ブラウンをHCに据えたのがこのシーズンです。彼らは去年カンファレンスファイナルに出場したメンバーとそう変わらないロスター構成でありながら、かつて苦戦した2ndラウンドの壁を悠々と突破してここまで辿り着きました。

 一方のキャブスもJBビッカースタッフの元にドノバン・ミッチェルというスーパースターを加えてプレーオフチームにはなったものの、HCに限界を感じてケニー・アトキンソンを迎え入れたのが昨シーズン。レギュラーシーズンでサンダーに次ぐ64勝という突出した強さを見せました。個人的には優勝候補筆頭という風に見ていましたが、ペイサーズの戦略に下されます。そこからガーランドの対価にハーデンを獲得してプレーオフに臨んだカンファレンスファイナルでした。

 共に優勝に向けてステップアップを望んだチーム同士白熱したシリーズになるかと思っていましたが、結果はニックスのスイープ勝ちという、全く予想していなかった決着を迎えます。

 

レギュラーシーズンの1勝が勝負を分けたシリーズ

 両チームにあった最大の差は、まず間違いなく疲労だったでしょう。ニックスが最も苦戦した1stラウンドでゲーム6まで、そしてそのゲーム6は最大61点差という圧倒的な差をつけたものでした。2ndラウンドのシクサーズはセルツとゲーム7の終盤まで競る熾烈な戦いで疲れ切っており、有無を言わさぬスイープ勝ちです。カンファレンスファイナルが始まるまでに中8日、充分な休養を取る機会がありました。

 対するキャブスは1stラウンドでラプターズ、2ndラウンドでピストンズとゲーム7までもつれる大接戦を繰り広げ、中1日という超過密日程でロードゲームを迎えます。苦しいなんてものじゃなかったのは間違いありません。

 ただこれは、単にニックスの運が良かったという話ではないですよね。1stラウンドは言ってもどちらも苦戦したのでそこに差はなかったとしても、レギュラーシーズンを3位で終えたニックスは1位のピストンズと反対の山に行けて、4位だったキャブスは当たってしまいました。そしてニックスのレギュラーシーズンの勝利数は53、キャブスは52でした。

 あと一回レギュラーシーズンで勝っていればトーナメントが変わり、キャブスがファイナルに進出していた……というのは全く違う話ですが、ニックスVSピストンズのシリーズは去年ゲーム6まで行ってましたからね。ここまで余裕を持って戦えてはいなかっただろうなとは思います。

 だから、レギュラーシーズンのたった一回の勝ち負けがこのシリーズの展開を大きく左右した、そんな印象があります。残酷な話だとは思いますけどね。でもそれがNBAという究極の競争だと雄弁に語っている気もします。そんな究極の競争だからこそプレーのレベルで、勝敗にはドラマがあり、優勝の価値が高い。ある意味、NBAというリーグの過酷さと勝ちを象徴するようなシリーズだったと思います。

 

層の厚さの戦い

 キャブスは9人、ニックスが10人をローテーションメンバーとして戦いました。共にスターターからベンチメンバーを活用した、所謂層の厚さで戦うチーム同士です。

 ただ去年までのニックスを見ていると驚きですよね。スターターの他にはロビンソン、マクブライド、ペイン以外はほぼ出番なしで、苦しくなるほどスターター酷使だったシボドーから考えると、果たして同じ球団なのかと思ってしまうほどの変化です。ハートなんて40分出なかったら「シボドー体調悪いのかな」と思ってしまう時期がありました。そこから10人ローテにまで広がったのは、間違いなくHC交代の効果。

 そしてHC効果としてもうひとつ、ウィングのオフェンス力を活かしたプレーが増えました。単にブランソンとタウンズで崩すだけではなく、とりわけボールを持たないミカルがスクリーンを使ったり、使わなくてもディフェンスのギャップに入り込んでボールを貰いミドルを打つプレーパターン、そして崩したところでボールを貰って正確なキャッチ&スリーとカッティングで点を取るパターンが増えて、ブランソン頼りのオフェンスから脱却しました。オフボールで動くウィングにパスを捌く起点役としてタウンズが機能したこともあり、チームとして幾つかベースとなる戦術を生み出したブラウン。

 実はこれって結構キャブスのやり方と似ていると思うんですよね。キャブスもミッチェル頼りのオフェンスからスクリーンを使って空いた選手に素早くパスを回して打たせる、ウィングのシュート力を活かしたオフェンスになっています。そこにハーデンが加わったことでピック&ロールが増えて微妙に雰囲気は変わりましたが、基本ラインはそこまで変わってないかと思います。ビッグマンがパサーになるというパターンはあまりなかった記憶ですが、違いと言えば案外それぐらいなのかなと。

 そういうチーム事情だからか、両チームのサラリー総額も似たり寄ったりというか、キャブスが約217.4milで1位、ニックスが約211.4milで2位です。本当に結構似た者同士。

 違うのはその内訳でキャブスのサラリー上位5人の総額が167.9mil、ニックスは171.9milと、実はニックスの方がスターターにお金を使っています。言い換えるとキャブスは49.5mil、ニックスは39.5milを他の選手に使っているということです。「ベンチメンバーに使う金額」と考えるとこの10milの差は物凄く大きい。実際ニックスのベンチユニットであるロビンソン、クラークソン、シャメット、マクブライド、アルバラードの内、ロビンソン以外の4人は5mil以下のほぼミニマムサラリーです。

 おまけにこの4人はガードです。ロスター構成という観点から考えると、とてもじゃないですがニックスのベンチユニットは「誰もが羨むような」構成ではないですよね。しかし彼らは時にガード、時にウィングとしてベンチから起用され、その役割を全うしています。特にクラークソンは、5年前はシックスマン賞のスコアラーだったのに、得点よりもリバウンドの方が多い試合さえありました。

 これが今シーズンのニックス最大の躍進に繋がったと思っています。元々スターターの強さだけで戦っていたようなチームでしたが、ここにベンチユニットが加わることでチーム全体のインテンシティを保っています。

 この戦い方は去年のファイナルを機に一気に流行となりました。しかし、ニックスが凄いのはこのベンチユニットでその戦い方をしたことですよね。「フロントが選手を揃えてくれないなんて言い訳だ」というようなブラウンでした。

 ニックスのこの戦い方は、もしかしたら今後のNBAのチーム作りを変えるアイデアになるかもしれない、と個人的には思っています。ガードはNBAでは基本的にどのチームも充足しているポジション、つまり需要に対して供給が多いのでサラリーが安くなりやすいポジションです。なので獲得しやすく、それでいてウィングとして見るのであれば比較的スキル面で問題が少ない。

 一方でフィジカルとディフェンスに問題が出がちですが、そこさえ問題にならなければNBAのサラリーキャップのルールを攻略する鍵になる……かも。実際にはチーム事情によって全く話が変わって来るので何とも言えませんが、今後は「層を厚くする動き」において今までよりもガードの需要が高まって来るかもしれないという傾向の話ですね。

 少なくともフィジカルの強いガードはどこかしらで需要があるでしょう。事実ニックスのマクブライドはウィング顔負けのフィジカルです。それでなくとも、アルバラードのようにしつこいディフェンスが出来る選手も。個人的にクラークソンは結構良いディフェンスをする印象があったのであまり違和感はありませんでしたが、シャメットがディフェンスで弱点にならなかったのはちょっと意外でしたね。

 

 他にも書きたいことはあるのですが、長くなりすぎてしまうのでここで切りたいと思います。選手層とレギュラーシーズンの戦い方がポイントになった、今のNBAのトレンドがそのまま出たようなシリーズでしたね。非常に面白かったです。