ボカロ曲というものを抵抗なく聴けるようになったのはつい最近のことでした。初めて聴いたのは2013年頃だったと記憶しています。千本桜とかロストワンの号哭とかだったかな、当時の私にはどれも「メロディーは良いけどやっぱり声が……」となってしまって正直生理的に受け付けませんでした。
じゃあボカロのカバーはどうなのかと言われると、これがまた難しい。確かに声に対する拒否感はなくなったのですが、その上で今度は「なんか響かないな……」となっていました。この頃のボカロ曲って初音ミクの消失然りやたらめったらにテンポが速い曲が多かったので、凄いという感想以上に聞いてて疲れる、みたいなことを感じていたように思います。
また当時はAKB系列が途轍もない盛り上がりで、それにも興味を持てなかった私は逃げるようにアニメと90~00年代のJ-POPへとのめり込んでいました。2012Sparkの新時代感は拭えず、UVERworldは未だにTHE ONEが最新のアルバムだと思っています。7日目の決意は最早未来の曲だ。
そんな谷間の時代にブレイクスルーを起こしたのが、奇しくもボカロPの米津玄師。ボカロっぽさがありつつ魂を感じる肉声を伴ったアイネクライネという曲は、まさに当時私が求めていたものだったように思います。ここからKing Gnu、Official髭男dism、今はMrs. GREEN APPLEでしょうか、J-POPが息を吹き返したと勝手に感じちゃっています。
その裏で(裏なのかな)ボカロというジャンルは着々と勢力を伸ばしていきました。象徴的なのはYOASOBIの夜に駆けるの大ヒットだと思いますが、ヨルシカや最近だとキタニタツヤ等、元ボカロPの肩書を持つアーティストが次々にヒット曲を生み出しています。時代が追いついたのか、或いは培った感性を大衆向けに加工する術を身につけたのか。あとシンプルに調声の技術が凄まじい。
かつて「ボカロっぽい」というだけで萎縮していた私も、今となっては「ボカロっぽい。いいね!」と思うようになりました。今では普通に好きなジャンルです。
中でも最近ハマっているのが、バーチャルYouTuberの星導ショウさんがカバーしたこの曲。夜もすがら君想ふ、君色に染まるで有名な西沢さんPの恋の魔法です。
西沢さんPはロックが好きらしく、ギターに関しては自身で演奏して曲に使うこともあるそうです。だからか、曲のテイストがそもそも凄く好きなんですよね。曲調はしっかりめなロックで、歌詞と声はハートフル。一見相反する要素を違和感なく混ぜてこれまでにない新たな価値観を作る、創作者としては頭が下がります。
そんな西沢さんPの独特な世界観にすっかり魅了された頃に出会ったのがこのカバーを聞いて、胸がざわつきました。
恋の魔法という曲は歌詞やMVの絵のテイストからも分かるように、片思いしている少年が、好きな子に自分のことを好きになって欲しくて奔走する様は、犬に例えるとチワワのような微笑ましさを覚える内容です。この「微笑ましさ」というのが、私が西沢さんPの曲が好きな理由で、同じくバーチャルYouTuberの大空スバルさんのカバーも性別は違えど感じ方は概ね一緒でした。
じゃあ星導さんのカバーはどうなのという話なのですが、キーを下げているということもあってまず曲の雰囲気が変わりますし、何より本人の声が低めなので、正直初めて聴いた時は「良い曲だなー、でもどっかで聴いた事あるような……」みたいな感じでした。で、しばらくして「あの恋の魔法か!」となったわけですね。
私が聴いたカバーはどれも少年少女的な可愛らしい感じだったので、がっつり成人男性、しかも声のトーン的にはややダウナー寄りというのは完全に不意を突かれた格好です。その声でこの微笑ましい歌詞が歌われるわけですよ。例の如く犬でいえば見た目は凛々しいのに懐いたらベタベタに甘えてくるウルフドッグみたいな感じの堪らなさがありますね。
またこのダウナー寄りな声というのが非常に重要なポイントだと思っていて、私はこの声から連想して「普段はクールで落ち着いたあのイケメンが実はこんなこと考えていたんだ!」というストーリーラインをこのカバーを聴いて勝手に引きました。そしたら「こんなイケメンにこれだけ好き好き思われている人は幸せ者だな」と思って微笑ましくなったんですよね。原曲の少年少女の甘酸っぱい感じも良いんですが、星導さんのカバーはまた違う良さがあって私はドストライクでした。
君色に染まるとかカバーしてくれないかなー。星導さんの低い声で可愛い系の曲を歌うのは私に非常に需要があるので、今後ともよろしくお願いしたいですね。ということで、あまりにもこのカバーが好きすぎて年甲斐もなくキャッキャしてしまった、という話でした。