※この記事はアニメ「SSSS.GRIDMAN」のネタバレが含まれます。
前回のチェンソーマン繋がりで「CV:上田麗奈のヒロインといえば?」と考えた時、真っ先に浮かんだのがSSSS.GRIDMANの新条アカネでした。思い出したついでに改めて見返してみたのですが、相変わらずの傑作ぶりでした。
SSSS.GRIDMANは人生の中でもかなり好きな作品のひとつで、アニメ好きであれば誰でも一度は見て欲しいと思っています。今回はそんなSSSS.GRIDMANの魅力を語ってみたいと思います。
■新条アカネの物語
記憶を失った響裕太がグリッドマンと出会い、突如町に現れる怪獣たちを相手に裕太がグリッドマンとなって戦う。SSSS.GRIDMANはこの大筋のストーリーに裕太が密かに思いを寄せる宝多六花や友人の内海将たちグリッドマン同盟の面々、そしてクラスメイトで才色兼備の美少女であるアカネが絡む青春群像劇です。裕太の視点からみればヒーローものの王道ストーリーであり、六花や内海の視点からみれば怪獣騒動に巻き込まれた人間の不安や裕太の力になれない無力感が描かれている等、色々な見方が出来るシナリオになっていますが、多くの人が共感出来るのはアカネ視点で描かれるストーリーラインでしょう。
作中世界はアカネの妄想によって生まれたものであり、即ち彼女は世界の創造主でした。現実のアカネがどういった人物でどういう悩みを抱えていたのかは詳しく描写されていませんが、才色兼備の美少女という設定も含めて彼女の願望は、誰もが一度は感じた事があるような極めて普遍的な悩みだったのかもしれません。彼女の情動によって怪獣は生まれ、アカネが気に入らない人間は怪獣に襲わせて排除する。そこに突如現れたグリッドマンという存在は、当初の彼女にとっては敵でした。
しかしグリッドマンが度々口にする使命というのが「怪獣から人々を救う」だけでなく「新条アカネの心も救う」ことでもあったというのがラストシーンに向かうにつれて分かってきます。グリッドマン同盟たちの思いを、六花の言葉を通じて少しずつ理解していく最終話の過程は涙を禁じえません。
■完璧すぎる最終回
最後は自ら怪獣になってしまったアカネとグリッドマンとの戦いです。その見た目は固く閉ざされた彼女の心を表現したようでグリッドマンは苦戦しますが、アカネが過去に作りだした怪獣であるアンチが彼女を救い出します。その後、姿を現した真の黒幕であるアレクシス・ケリヴとグリッドマンとの最後の戦いが始まります。
あわや敗北と思われた最中、グリッドマンは自らの本当の力に気付き、フィクサービームを世界に放ちます。辛い現実から逃避して世界を作り、逃げ出した先でもグリッドマンに怪獣を倒されて否定され続けた(と感じていた)アカネは完全に自信を喪失していましたが、フィクサービームを通して友の呼ぶ声が伝わり、自ら現実に帰らなければならないと気づきます。これによってアレクシスは力を失い、グリッドマンは勝利しました。
この時の彼女が感じていたのは、自分が怪獣を生み出して多くの人を傷つけたことへの後悔でした。全ての元凶であることの責任を感じていて現実に帰らなければならないと思いながらも、怖くて前へ進めない。そんな彼女の背中を押したのが六花の言葉でした。六花は茜に定期入れをプレゼントして、離れていても自分たちはいつでも一緒にいると伝えます。そして最後に六花はアカネにあるお願いをして、アカネは元の世界へと帰っていきました。このお願いが劇場版の「グリッドマン・ユニバース」で繋がるのですが、それはまた別のお話。
アカネが元の世界に帰ると、使命を果たしたグリッドマンと新世紀中学生たちも彼らが元いたハイパーワールドに帰還します。これにより裕太はグリッドマンたちの記憶を失い、普通の高校生に戻ることとなります。季節は冬になり、裕太、アンチ、そしてアカネが現実世界で目を覚ますところで物語は幕を閉じます。
最後のシーンは実写となっており、直接的な説明はないものの六花がプレゼントした定期入れが映り込んでいる為、その女性がアカネであることが分かるようになっています。絵面だけでいえば一見唐突な画面切り替えのようにみえますが、ラストに至るまでの過程が極めて丁寧に描かれているので、寧ろこれ以外の終わり方はなかったといえるような着地でした。
いつまでも殻に閉じこもってはいられない、しかし前に一歩踏み出す勇気が出ない。そこから一歩踏み出す勇気を与えてくれるグリッドマン同盟の言葉は、アカネの心だけでなく私にも深く刺さりました。SSSS.GRIDMANは特撮もののようなファンタジックな描写が多いですが、作品の根底にあるのは極めて普遍的で現実的な不安や鬱屈した感情であり、だからこそラストシーンへの繋がり方に美しさを感じました。
■テーマ設定から完璧だった
作中に現実描写を入れるアニメは他にもありますが、ここまで現実描写を巧みに活かした作品は中々ないと思います。「電光超人グリッドマン」という特撮作品をテーマに設定したところから話の積み上げ方まで完璧に作られたのがSSSS.GRIDMANでした。名作の中には当初のテーマや路線から変更して成功した作品が数多くありますが、徹頭徹尾、一貫して完璧に仕上げた作品というのは本当に珍しい。しかもこれがグリッドマン・ユニバースまで続けられたというのだから、もうどうかしているんじゃないかと思ってしまいます。
SSSS.GRIDMANは全12話。これだけ見ても充分に満足出来る内容ですが、必ずグリッドマン・ユニバースまで見る事をお勧めします。以前の私は「SSSS.GRIDMANで綺麗に終わったから……」とSSSS.DYNAZENON以降見ていなかったのですが、最近になって友人にゴリ押しされてグリッドマン・ユニバースまで見てみました。結果「なぜもっと早く言ってくれなかったんだ」と教えてくれた友人に理不尽にキレてしまいました。
ちなみになぜグリッドマン・ユニバースを見た方がいいのかは言えません。きっとその理由を書いたとしても充分過ぎるほど面白く見られるとは思うのですが、何も知らずにあの映画を見た時の衝撃は凄まじいものがあります。だから言えません。