大ヒット作「チェンソーマン」の劇場版が2025年9月19日に公開されました。作中でも人気のあるレゼ篇の映像化という事で視聴者側のハードルも高くなっておりましたが、期待に応える内容だという評価をされています。興行収入も今のところ大変好調。
私も公開2日目に劇場に足を運びました。2日目の土曜日といえど、レイトショーなのであまり人がいないのかなと思っておりましたが、席の半分ぐらいは埋まっていたのでアニメ作品という事を考えると中々のものだったと思います。
結論から申し上げますと、チェンソーマンのファンなら絶対に見て損はない内容でした。本当に面白くてもう一回見に行こうかな、なんてことを考えています。
■チェンソーマンらしさ全開の映像づくり
私はアニメからチェンソーマンを見て「なんて面白い作品なんだ!」と思って漫画を買いました。その為、私の中でアニメ版への評価はかなり高かったのですが、原作ファンからすると大変不評だったようです。アニメ版は監督のディレクションにより全体的にリアル寄りな作りになっていて、それが原作の雰囲気とミスマッチになっていたというのが評価を落とした原因で、確かに漫画を読んでからもう一度アニメを見ると「確かに」となりました。
チェンソーマンといえば主人公のデンジを筆頭に、登場人物のぶっ飛んだキャラクター性が魅力です。しかしそのぶっ飛び具合は、漫画という媒体だから許されている側面もあると思っています。ただでさえアニメーションという「動き」があって漫画よりも現実に近い媒体で、更にリアル志向の演出をすると、デンジが「面白くて魅力的な主人公」である以上に「ちょっと危ないな」「現実にはいて欲しくないな」みたいなことを改めて見て思いました。
一方で比較的常識人なキャラについては、その演出がハマっていたとも思います。特に早川アキや姫野の感情の機微がリアルに描かれたアニメ最終話近辺は、心に残るものがありました。その為「デビルハンターたちの群像劇」として見るならアニメ版は秀逸な作品で、評価を下げた理由を理解出来るものの好きなことに変わりはありません。しかし「デンジが主人公の物語」として見るならばその主人公が作品の雰囲気から浮いており、作品の中心というより舞台装置のひとつという位置づけに近く「チェンソーマンならでは」の魅力が薄い。少なくともアニメが原作だったら良作という枠に留まり、大ヒットにはならなかったのではないかと思っています。
そして今回の劇場版、監督が交代となりました。その結果、チェンソーマンらしさ全開の仕上がりになっています。良くも悪くも群像劇のように描かれたアニメから、劇場版では満を持して主人公として魅力を遺憾なく発揮していて、ファンの期待にしっかり応えた内容でした。
劇中である登場人物が「怪獣バトル」と口にするシーンがあるのですが、バトルシーンはまさにそんな感じのハチャメチャさがあり、他にも鮫に乗って戦闘するシーンの意味不明さなんかは原作以上のものを感じました。
中でもOPである米津玄師氏の「IRIS OUT」は、狂人の純粋な恋心を歌った曲で、チェンソーマンという作品を象徴するようなカオスさがありました。映像も原作ファンが喜ぶカットがそこかしこに散りばめられており、正直この映像だけでも金を払う価値があるとさえ感じます。ちなみにリンクの映像はあくまでPVであり、実際に映画で流れるものとは違うので、興味がある方は是非劇場に足を運んでみてください。踊るチェンソーマンがあまりにも愉快。
■キャラクターの魅力に特化した見せ方
レゼ篇はチェンソーマンの中でも特に人気が高い中編です。ただ内容としては割とよくあるボーイミーツガールで、話自体が面白いかといわれれば個人的には微妙です。特に私は12巻まで一気読みしたので、正直なところかなり印象の薄い章でした(レゼ篇の後が好きなので)。
ただ劇場版の主役であるレゼの存在感は凄まじいものがあります。作品について思い返した時、どういう繋がりでその場面に至ったのかは思い出せずとも、彼女が登場するコマの絵ははっきりと思い出せるのです。仕草や表情、ファッションや言葉遣い、その全てが目を惹く描き方で、もしこれを週刊連載で見せられたら続きが気になって仕方なかっただろうなと感じます。
映画ではプールのシーンが時間を掛けて流れていましたが、個人的にはカフェでのやり取りでのレゼが最も魅力的だと思いました。プールのシーンだと高校生の青春風な感じで割と年相応に見えるのですが、初対面だといまいち年齢感が掴めないという事もあってか、彼女の幼さを残しつつも妖艶な表情が大人でも子供でもない唯一性となっています。おまけに声優の上田麗奈氏の演技がこの絶妙な「年齢の間」を助長していて、私の中で「印象に残るキャラクター」から「忘れられないキャラクター」になってしまいました。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、最後のシーンの切なさと言ったら……
総じて本作はレゼというキャラクターの魅力を映像、音楽、演技の全てを駆使して最大化しようという心意気が垣間見える内容でした。話自体が難しくないというのも手伝って、これで初めてチェンソーマンを見るという人にとっても単純にボーイミーツガールものとして楽しみやすい映画だと思います。
■まとめ
正直、この映画で初めてレゼ篇を見るという方が羨ましくてしょうがないです。もしも私が漫画ではなくこの映画でレゼ篇を見たとしたら、もっとチェンソーマンという作品の事が好きになっていたのかな、と思います。個人的にはレゼ篇~第一章終了の話が凄く好きで是非とも映像化して欲しいと思っているのですが、今後のメディア展開に大いに期待したくなる、そんな出来でした。原作ファンの方は勿論、チェンソーマンという作品を見た事がない方にも見て欲しいです。